こんにちは。
ブランディングディレクター|事業構造パートナーの松本カヅキです。
「自社の商品を、実店舗でも販売していきたい」
そう考えたとき、最初に思い浮かぶのは、商品を置いてもらえそうな店舗や、商談につながるバイヤーを探すことかもしれません。
ただ、商品を小売店へ卸し、店頭で販売していくまでには、その前後にいくつもの準備があります。
・商品の価値や顧客を確認する。
・店頭で販売しても利益が残る価格を考える。
・展開先と営業ルートを決め、商談に向けた資料を整える。
・導入の前後で、商品が動くための販促も必要です。
これらを別々に進めていると、商品は完成しているのに卸価格が合わない、商談には進めたのに売り場での見せ方が決まっていない、といったことが起こります。
また、店頭展開は、商品が棚に並ぶところで終わるものでもありません。
商品を知り、店頭で確かめ、購入し、必要になったときにもう一度買える。
その前後までがつながった状態を、私は「買い場」と捉えています。
今回ご紹介する5つのステップは、その流れを、商品、価格、売り場、商談、販促へ落とし込んでいくためのものです。
この記事は、自社商品を外部の小売店へ卸し、店頭での販売を広げたいメーカー・ブランドを主な対象にしています。
私はこれまで、ブランドメーカー側の立場で、コスメ約500アイテム、雑貨約600アイテムの商品展開・店頭導入に携わってきました。
その経験をもとに、商品を店舗で販売するまでの準備を、5つのステップに分けてご紹介します。

商品を店舗で販売するまでの5ステップ
全体の流れは、次のように整理できます。
1.商品の価値、顧客、売り場との相性を確認する
2.価格と取引条件を整理する
3.販路、展開先、営業ルートと順番を考える
4.バイヤー商談と営業資料を準備する
5.導入前後の販促と再購入までを考える
ステップ1|商品の価値、顧客、売り場との相性を確認する
最初に確認したいのは、その商品を誰に、どのような場面で使ってもらいたいのかです。
商品の特徴や機能を並べるだけでは、展開先はなかなか見えてきません。
その商品を使ったあと、どのような時間や状態が生まれるのか。顧客は何を得たくて、その商品を選ぶのか。
たとえば、スキンケア商品であれば、成分や使用感だけでなく、その商品を使うことで朝や夜の過ごし方がどう変わるのか。
生活雑貨であれば、便利になるだけでなく、使う人や、その周囲にどのような時間や会話が生まれるのか。
商品の先にあるものまで見ていくと、どの売り場で、何を伝えるとよいのかも考えやすくなります。
香りや質感、色味を試すことに意味がある商品もあります。使い方を説明しながら知ってもらう方がよい商品もあります。
商品と顧客だけでなく、その間にある売り場が、どのような役割を担うのかも見ておきたいところです。
そのうえで、実際に店頭へ並べるための条件を確認します。
パッケージの大きさや形状によっては、棚に収まりにくかったり、陳列方法が限られたりすることがあります。必要な表示や使い方が読み取れるか、売り場で見たときに商品の特徴が伝わるかも確認します。
商品の中身、容器、原価、製造ロットなど、後から変えにくいものがあります。
一方で、POP、什器、伝える言葉、SNSや公式サイトへの導線など、展開しながら見直しやすいものもあります。
何を商品企画の段階で決めておくのか。何を店頭展開に合わせて動かせるのか。
この切り分けができていると、商談が近づいてから、すべてを見直す状態を避けやすくなります。
ここでいう「売り場から考える」は、必ずしも売り場に合わせて商品を変える、という意味ではありません。
商品の価値、使う人、その商品と出会う売り場。
その重なりを確認することが、店頭展開の土台になります。
ステップ2|価格と取引条件を整理する
次に、価格と取引条件を確認します。
商品を小売店へ卸す場合、消費者が支払う販売価格のすべてがメーカーの売上になるわけではありません。
小売店へ納品する卸価格があり、問屋や代理店を介する場合には、その役割に応じた取り分も必要になります。
まず確認したいのは、上代、小売店への卸価格、問屋や代理店を介した場合のメーカー納入価格です。
そこから原価、物流費、販促費などを差し引いても、店頭展開を続けられる利益が残るかを見ていきます。
問屋や代理店を介する場合は、単に中間の取り分が増えると見るのではなく、営業や物流など、自社で持たない機能の一部を外部に担ってもらう、と捉えることもできます。
掛率だけで条件の良し悪しを決めるのではなく、メーカー、問屋、小売店が、それぞれ何を担うのかも含めて考えます。
初回ロット、納期、物流方法、返品条件なども、商談が始まってから考えるのでは遅い場合があります。
店舗数が増えたときにも出荷できるのか。追加注文へ対応できるのか。返品が発生した場合、どこまで負担できるのか。
ECだけを想定して商品を企画したあとで実店舗へ展開しようとすると、卸価格を設定した時点でメーカー側に利益がほとんど残らず、価格や原価、商品構成などにひと工夫が必要になる場合もあります。
店頭展開では、価格、商品企画、販路を切り離さずに見ておきたいところです。
卸価格と掛率については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
👉 [卸価格の相場ってどう決まる?|ブランド力で変わる“価値の分け方”]
ステップ3|販路、展開先、営業ルートと順番を考える
価格と条件が見えてきたら、どの売り場へ、どのルートから提案するかを考えます。
一口に実店舗といっても、バラエティショップ、コスメショップ、生活雑貨店、セレクトショップ、百貨店、ドラッグストア、量販店、ディスカウントストアなど、それぞれ顧客や品ぞろえ、商品の見られ方が異なります。
店舗数や知名度だけで決めるのではなく、自社商品の価値が、どの売り場で伝わりやすいかを見る必要があります。
商品がどこに並んでいるかは、販売場所の情報だけではありません。顧客から見れば、その商品をどのように受け取ればよいかを伝える、ブランドからのメッセージにもなります。
以前、フィンランド産のキシリトール100%ガムの商品展開に携わったことがあります。
一般的なお菓子売り場で大手商品と並べるのではなく、商品の特徴を整理し、「噛むこと」を美容習慣の一部として見せる方向へ組み直しました。
パッケージや価格も、その見られ方に合わせ、バラエティショップやコスメショップのオーラルケア売り場へ展開しました。その後、女性誌で紹介され、サロンやフィットネス関連の販路にも広がっていきました。
どの売り場で、どのような意味を持つ商品として出会うかによって、その後の広がり方も変わります。
現在、ECでどのような人に買われているのか。すでにサロンなど、特定分野の専門店で販売実績があるのか。次の展開先として、どの売り場が自然なのか。
これまで、どのような場所で販売されてきたのか。
その一つひとつは積み重なり、ブランドの履歴書のように残っていきます。
有名な店舗へ早く入ることだけが正解ではありません。今後どのようなブランドとして見られたいのかも含めて、展開先と順番を考えます。
営業ルートにも、小売店との直接取引、問屋や代理店を介する方法、展示会、既存取引先からの紹介などがあります。
展示会も、出展すれば自動的に販路が広がるものではありません。何のために出展し、そこでどの販路と接点をつくるのか。その後、どのルートから、どの順番でアプローチするのか。既存の問屋や代理店との棲み分けまで含めて考えておきます。
あわせて確認しておきたいのが、商品の納入元です。
小売企業や取引形態によって運用は異なりますが、一つのJANコードに対して納入するベンダーを一社に定める「1JAN1ベンダー」と呼ばれる運用があります。
複数の代理店や問屋が、同じ商品を別々の条件で同じ小売店へ提案すると、納入元や価格条件が複雑になることがあります。
誰が、どの商品を、どの小売店へ提案するのか。営業ルートは、動き始める前に整理しておきます。
バラエティショップへの展開については、こちらの記事で紹介しています。
👉 [バラエティショップとは?|雑貨・コスメブランドが店頭展開で知っておきたいこと]
コスメを扱う実店舗の違いについては、こちらをご覧ください。
👉 [コスメショップとは?|これから店頭展開を考えるコスメブランドが知っておきたいこと]
ステップ4|バイヤー商談と営業資料を準備する
展開先と営業ルートが決まったら、バイヤー商談に向けた準備へ進みます。
商談では、商品の魅力や開発への想いだけでなく、バイヤーが取り扱いを判断するための情報が必要です。
誰に向けた商品なのか。
なぜ、その売り場で扱う意味があるのか。
価格や取引条件はどうなっているのか。
現在、どこで販売され、導入前後にどのような販促を行うのか。
こうした内容を、限られた時間の中で説明できるように整理します。
営業資料としては、ブランド概要書、商品資料、価格や取引条件、現在の販売実績、これまでの販促と今後の予定などが基本になります。
商品単体の写真や説明だけではなく、売り場でどのように見せるのかも示せると、店頭に並んだときのイメージを共有しやすくなります。
POPや什器、テスターを用意する予定があれば、完成品がなくても、方向性を説明できる状態にしておきます。
ただし、売り場の完成形をメーカー側だけで決めるものではありません。
小売店の顧客や品ぞろえを踏まえ、自社商品がその売り場でどのように選ばれるのかを提案します。
バイヤー商談での考え方や、商談前に整えておきたい準備については、こちらの記事で紹介しています。
👉 [大手バラエティショップなどのコスメ・雑貨バイヤー商談について。]
自社の場合、どこから整理するとよいかを確認したい方は、商品展開・店頭導入サポートの内容をご覧ください。👇
ステップ5|導入前後の販促と再購入までを考える
店頭で商品を動かすための準備は、商品が導入されてから始めるものではありません。
商談前から、どのような人に商品を知ってもらうのか、店頭で何を伝えるのか、どのような販促を行うのかを考えておきます。
SNSやEC、口コミなどを通して、すでに商品を知っている人がいる状態をつくることも、店頭展開の準備の一つです。
そして導入後は、実際の販売状況を見ながら、POPや見せ方、販促内容を調整していきます。
商品が棚に並んだだけでは、初めて見る人に、その価値が十分に伝わるとは限りません。
店頭では、商品に気づき、手に取り、パッケージやPOPを見る。テスターで香りや使用感を確かめたり、スマートフォンで口コミや公式サイトを調べたりすることもあります。
その短い時間の中で、何を確かめられるようにするのか。
必要に応じて、POP、什器、テスターなどを用意します。ただし、売り場の広さや棚の仕様に合っているか、店舗側が無理なく設置や補充を続けられるかも見ておく必要があります。
同時に、店頭の前後にも目を向けます。
SNSで知った商品を、実店舗で初めて確かめる。店頭で商品を知り、その場で口コミを調べる。購入後に使い方を確認し、必要になったときには、ECや別の店舗でも買えるようにしておく。
メーカーから見ると、SNS、EC、実店舗は別々の販路や施策に見えます。
けれど、買う人から見れば、ひと続きです。
商品を知る。
少し気になる。
店頭で実物に出会う。
手に取り、試し、確かめる。
買う。
使う。
必要になったときに、また買える。
この前後までがつながって、買い場になります。
小売店は、商品と顧客が実際に出会い、手に取り、購入できる場所を担います。
メーカーやブランド側には、その前に関心を育て、商品の価値を伝え、導入後も販促を続け、購入後の接点をつくる役割があります。
また、導入後は、販売数や回転率を確認します。テスト導入であれば、その結果を見ながら、POPや見せ方、販促内容を見直します。
店頭での実績は、追加導入や多店舗展開、次の小売店への提案材料にもなります。
商品が入ったところをゴールにせず、その前から関心を育て、店頭で選ばれ、その後の購入へつながっていくところまで見ていきます。
5つのステップは、途中で行き来する
実際の商品展開は、必ずしも一方向に進むわけではありません。
価格を計算した結果、商品やパッケージに戻ることがあります。
展開先を考えたことで、伝え方が変わることもあります。
商談で得た反応から、資料や販促物を見直す場合もあります。
5つのステップは、一度決めたら戻れない工程ではなく、商品展開の全体を見ながら、必要な場所へ戻るための地図です。
まとめ|商品を店舗で販売するには、全体をつないで準備する
商品を小売店へ卸し、実店舗で販売していくまでには、商品の完成以外にも準備があります。
- 商品の価値、顧客、売り場との相性を確認する。
- 価格と取引条件を整理する。
- 販路、営業ルート、展開の順番を考える。
- バイヤー商談と営業資料を準備する。
- 導入前後の販促と再購入までを見る。
商品をどのお店に置いてもらうか。
それと同時に、その商品がどのように知られ、店頭で何を確かめてもらい、購入後も必要な接点へつながっていくのか。
売り場を探すだけでなく、買い場をどうつくるか。
そこまでを一つの流れとして考えることが、商品展開・店頭導入の準備になります。
商品展開・店頭導入の進め方を整理したい方へ
ここまで5つのステップに分けて見てきましたが、実際には、すべての商品がステップ1から順番に始まるわけではありません。
すでにECで販売している商品と、これから発売する商品では、見直す場所も変わります。
商談まで進んでいる場合には、商品そのものではなく、価格や営業ルートに戻った方がよいこともあります。
全体の流れは同じでも、自社の場合、どこから整えるとよいのかはそれぞれです。
商品展開・店頭導入サポートでは、自社商品の現在地を確認しながら、
どの価値を、
どの売り場で、
どう伝えるか。
そして、何から進めるか。
を一緒に整理しています。
自社で商品展開を進めていくために必要な判断と準備を、全体の流れから整える支援です。

ブランディングディレクター|事業構造パートナー
松本カヅキ
