事業承継後、何から変えるか|変えにくいものと、今から動かせるものを分ける

【事業承継・後継経営】

こんにちは。

ブランディングディレクター/事業構造パートナーの松本カヅキです。

先代から、事業を引き継いだ。

事業承継後、何から変えるか。

そう考えはじめると、それまで見えていなかったものが、少しずつ見えてくる。

あの商品の見せ方は、変えたほうがいいかもしれない。

あの取引の進め方も、見直したい。

組織の役割分担も、もう少し整えられる気がする。

見直したいものが、一度に押し寄せてくる。

けれど、いざ手をつけようとすると、すぐには動かせないものに突き当たる。

長く使ってきた設備。

地域の中で続いてきた取引関係。

先代の代から続いてきた役割分担。

ここは変えられない。

あそこも、すぐには動かせない。

そう思っているうちに、本当は動かせるはずのものまで、動かせない気がしてくる。

事業承継のあとに必要なのは、変えられないものを切り捨てることではないのだと思います。

それを受け止めたうえで、どこから手をつけられるかを見つけていくことです。

事業承継後は、見直したいものが一度に押し寄せる

事業承継後は、見直したいことが、いくつも見えてきます。

事業は続いています。むしろ、自分の代でこうしていきたいという思いがあるからこそ、いろいろなものが目につきはじめます。

ただ、見直したいものが一度に見えると、頭の中では、それらが横一列に並びます。

すぐに動かせるもの。

何年もかけないと動かせないもの。

そもそも、動かしてよいのか分からないもの。

それらが混ざると、どこから手をつければよいのかが見えにくくなります。全部を一度に変えなければ、前に進めないようにも感じてしまう。

けれど、実際には、すべてが同じ手のつけ方で動くわけではありません。

「守るか、変えるか」だけでは、どこから手をつけるかは決まらない

事業承継のあとの見直しは、「守るか、変えるか」という形で語られることが多いものです。

先代のやり方を守るのか。

それとも、自分の代で変えていくのか。

たしかに、これは大切な問いです。何を大切にし、何を次に渡していきたいのか。その判断は、事業の芯にかかわります。

その手がかりになる、“先代がこれまで何を基準に選んできたのか”については、こちらの記事でまとめています。

👉[事業承継で引き継ぐもの|先代の判断基準をどう残すか

ただ、先代の判断基準をたどっても、自分たちなりの基準は、まだ十分に見えていないことがあります。

事業は続いているのに、何を基準に、どこから見直せばよいのかが、少しぼやけていく。

これは、事業承継後に現れやすい「経営の霧」のひとつです。

そして、霧が生まれている背景が見えても、現実のどこから扱うかまでは決まりません。

「これは残したい」「これは変えたい」という判断が見えてきても、それを現実の事業でどう扱うかは別の問題です。変えたいものが、何年もかけなければ動かせないこともあります。

「守るか、変えるか」という価値の判断と、「実際に、今動かせるか」という現実の条件は、必ずしも同じところにありません。

だから、もうひとつ、別の見方が要ります。

変えにくいものと、今から動かせるものを分けて見る

事業承継後、何から変えるかを考えるときは、変えにくいものと、今から動かせるものを分けて見てみます。

私は、この「変えにくい前提」と「今から動かせる余地」を分ける視点を、ハードとソフトの整理と呼んでいます。

事業には、すぐには変えにくいものがあります。

長く使ってきた施設や設備。

これまでの提供体制や、運営の流れ。

長く続けてきた取引の前提。

これらは、変えたいと思っても、思い立ってすぐに動かせるものではありません。

一方で、その前提の上でも、今から動かせるものがあります。

サービスの組み合わせ方。

お客様への提案の順番。

仕事の進め方や、役割の持たせ方。

そして、すでにあるものを、どう見せ、どう届けるか。

こうしたものは、今ある前提をすべて変えなくても、見直せる余地があります。

パソコンにたとえるなら、ハードは本体や部品のように、すぐには取り替えにくい部分。
ソフトは、その上でどう動かすか、どう使うかにかかわる部分です。

事業も、これに近い見方ができます。

ただし、物理的なものかどうかで分けるわけではありません。分けるのは、変えやすさ、動かしやすさです。

この二つが混ざったままだと、変えにくい設備や取引の前提につられて、本来なら扱えるはずの見せ方や届け方まで、動かせないように感じてしまいます。

けれど、分けてみると、見え方が変わります。

これは、今すぐには変えにくい前提。

これは、その前提の上でも動かせる余地。

そう切り分けることで、全部を変えなくても、今から手をつけられる場所が見えてきます。

変えにくいものには、制約だけでなく、蓄積もある

変えにくいものというと、足かせのように聞こえるかもしれません。たしかに、すぐには動かせないという意味では、制約です。

けれど、その中には、長い時間をかけて積み上がってきたものがあります。

地域の中で築かれてきた信頼。

長く続いてきた取引関係。

現場に根づいた技術や役割。

すぐには変えられないものは、見方を変えれば、すぐには手に入らないものでもあります。

事業を見直していくと、変えにくいものが、単なる制約ではなかったと気づくことがあります。そこに、これまで事業を支えてきたものが残っている場合があるからです。

何が今の事業を動かしにくくしているのか。

その一方で、何が事業を支えてきたのか。

変えにくい前提をすぐに動かそうとする前に、その両方を見ておく。それが、次の判断を考える手がかりになります。

今から動かせるのは、新しいことだけではない

一方で、今から動かせるものというと、新しい施策を足すことだと思われがちです。新しい商品や打ち出し、取り組みを始めることも、そのひとつです。

けれど、動かせるのは、新しく足すことだけではありません。

すでにあるものを、どう使い、どう届け、どう意味づけるか。

そこにも、動かせる余地が残っています。

同じ商品でも、見せ方を変えれば、伝わるものが変わることがあります。
同じ技術でも、使う場面を変えれば、活きる相手が変わることがあります。
同じサービスでも、提案の順番を整えることで、受け取られ方が変わることがあります。

動かせるものは、表面的な飾りつけではありません。

すでに事業の中にある資産を、どう活かすかという設計の部分です。

変えにくい土台の上にも、今から手をつけられる場所は残っています。

何を動かすかは、判断のモノサシと切り離せない

変えにくいものと、今から動かせるものを分けると、現実のどこに余地があるのかは見えやすくなります。

ただ、動かせるからといって、変えるとは限りません。

変えにくいからといって、そのまま残すと決まるわけでもありません。

この整理で見えてくるのは、何を変えるべきかという答えではなく、どこなら扱えるのかという可能性です。

その中から何を動かすかを考えるときに、判断のモノサシが必要になります。

先代が大切にしてきたものを見つめながら、自分たちは何を中心に置き、何を選び、何を次に残していきたいのか。

その判断のモノサシと照らして、今から動かすものを選んでいく。

変えたいけれど、すぐには動かしにくいものもあります。そうしたものは、無理に今動かそうとせず、時間をかけて見直していけばよい。

残したい価値があっても、そのための方法は、今の事業に合う形へ変えられる場合があります。

「守るか、変えるか」という価値の判断と、「変えにくいか、動かせるか」という現実の条件。

この二つを重ねることで、何を残し、どこから動かすのかが見えはじめます。

事業承継後は、動かせるところから整える

事業承継のあとに必要なのは、すべてを守ることでも、すべてを変えることでもないのだと思います。

まず、変えにくいものと、今から動かせるものを分けて見る。

そのうえで、何を大切にし、何を次に残していきたいのかと照らしながら、どこから動かすかを考える。

そうすると、今から手をつけるものと、時間をかけて見直すものを、分けて考えられるようになります。

これから事業を渡す側にとっても、この整理は役立ちます。

何を残してほしいのかだけでなく、何が短期間では変えにくく、どこに後継者が動かせる余地があるのか。

先代自身がそれを整理しておくことで、やり方を固定するのではなく、後継者が今の事業に合う形を考えるための土台を手渡せます。

引き継いだ事業を、その事業らしく続けていくことは、すべてを新しくすることではありません。

これまで積み重ねてきたものを土台にして、今のフェーズに合う形へ整えていく。

その順番が見えてくると、一度に押し寄せていたものも、少し落ち着いて見えてきます。

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事業承継にあたり、何を残し、どこから動かすのか。

これは、一般的な正解だけでは決めにくいものです。

先代から積み重ねてきたものと、今の事業の状況を見ながら、変えにくいものと動かせるものを、一度整理したい方へ。

これから事業を渡す先代の方、すでに引き継いだ後継者の方、どちらからのご相談も受けています。

事業全体の整理から、判断のモノサシ、現場へのつなぎ方まで、ご一緒しています。

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松本カヅキ