こんにちは。
ブランディングディレクター|事業構造パートナーの松本カヅキです。
「ECで少しずつ売れるようになってきたので、次は実店舗へ広げたい」
自社ECやモールで商品を販売し、SNSなどでも発信してきた化粧品・コスメ・雑貨ブランドから、そんな相談を受けることがあります。
ECで顧客が増え、口コミや販売実績も少しずつ積み上がってきた。
そこで次に、
「バラエティショップへ出してみたい」
「コスメショップや生活雑貨店へ広げたい」
「どうすればバイヤーと商談できるのだろう」
と考え始める。
実店舗に商品が並べば、これまでECやSNSだけでは出会えなかった人との接点も増えます。
ネットで気になっていた人には、実物を手に取って確かめてもらえる。
どんな人が立ち止まり、何を見ているのか。
店頭では、ECだけでは見えにくかった反応に触れられることもあります。
そして、実店舗への展開では、もう一つの視点が加わります。
小売店にも、その店ならではのブランドがあるということです。
小売店も、どんなお客様に、どのような商品や価値を届けたいのかを考えながら、品ぞろえや売場をつくっています。
自社の商品ブランドと、小売店が大切にしている価値はどこで重なるのか。その接点も、実店舗への展開では見ておきたいところです。
私はこれまで、複数のブランドメーカー側の立場で、コスメ約500アイテム、雑貨約600アイテムの商品展開・店頭導入に携わってきました。
この記事では、ECで販売してきた商品を、バラエティショップやコスメショップ、生活雑貨店などの小売店へ卸し、店頭で扱ってもらう展開について考えます。
その経験から、ECから実店舗へ販路を広げる前に確認しておきたいことをご紹介します。
まず、ECで「なぜ買われているのか」を見る
最初に見ておきたいのは、販売実績だけではありません。
現在、ECで商品が買われるまでに、どんな流れができているのかです。
誰が買っているのか。
どこで商品を知ったのか。
何に興味を持ったのか。
購入前に、どんな情報を見ているのか。
SNSで何度か商品を見たあと、ECへ来ている人もいるでしょう。
商品ページの詳しい説明や口コミを読み、比較したうえで購入している人もいます。すでにブランドを知っていて、商品名を検索して買いに来ている場合もあります。
同じ「ECで売れている」という状態でも、買われている理由は違います。
ECで支持されてきた顧客や、反応のよかった言葉、よく見られている情報をいったん整理しておく。
そうした積み重ねが、実店舗へ広げるときの大切な材料になります。
ECと実店舗では、商品の見られ方が変わる
ECで伝わっていた方法が、そのまま店頭でも通用するとは限りません。
ECでは、商品ページをスクロールしながら、写真、動画、使い方、開発背景、口コミなどを比較的ゆっくり見ることができます。
一方、店頭では、ほかの商品と一緒に棚へ並びます。
どのカテゴリーに置かれるのか。
隣にどんな商品があるのか。
その中で、何が最初に目に入るのか。
同じ商品でも、出会う環境が変わります。
たとえば化粧品・コスメであれば、香り、色、質感、使用感など、実物に触れることで分かることがあります。テスターが有効になる商品もあります。
多くの商品が並ぶコスメショップやバラエティショップでは、ECの商品ページのような長い説明を、じっくり読んでもらうのは難しくなります。
限られた売場の中で、何の商品なのか、誰に向けたものなのかが伝わる見せ方も必要になります。
雑貨の場合も、ECとは違った見え方があります。
雑貨は、文具、キッチン、インテリア、モバイル、キャラクター、服飾などカテゴリーが幅広く、店頭ではさまざまな商品と一緒に並びます。
商品によっては、色違いやサイズ違いなど複数のSKUをまとめて見せることで、シリーズとして選ぶ楽しさが生まれることがあります。
複数の商品で売場に「面」をつくる方が、そのブランドらしさを伝えやすい場合もあります。
逆に、単品でも特徴が強い商品なら、POPや什器などを使って一つの商品をしっかり見せる方法もあります。
ECでは商品ページを通じて詳しく見てもらえた商品が、店頭では「棚の中でどう存在するか」を考えることになる。
ここは、実店舗へ進むときの大きな違いです。
コスメを扱う実店舗の違いや、バラエティショップへの展開については、こちらの記事で紹介しています。
👉[コスメショップとは?|これから店頭展開を考えるコスメブランドが知っておきたいこと]
👉[バラエティショップとは?|雑貨・コスメブランドが店頭展開で知っておきたいこと]
ECの価格構造のまま、小売店へ卸せるか
次に確認したいのが価格です。
ECでは、メーカーやブランドが顧客へ直接販売する形があります。
一方、小売店へ商品を卸す場合には、小売店側にも販売するための取り分が必要です。
問屋や代理店を介する場合には、メーカーに代わって営業や物流などを担ってもらうこともあります。その役割に応じた取り分も含めて、価格構造を考える必要があります。
ECを前提につくった販売価格と原価のまま卸価格を設定すると、メーカー側に十分な利益が残らないケースも考えられます。
価格や原価、商品構成、流通の組み方にひと工夫することで、実店舗への展開が現実的になる場合もあります。
メーカーと小売店、それぞれの役割や利益も考えながら、無理なく続けられる条件を整えていきます。
卸価格・掛率・取引条件については、こちらの記事で詳しく整理しています。
👉[卸価格・掛率はどう決める?|商品を小売店へ卸すときの価格と取引条件]
どの売場へ広げるかは、ブランドのこれからから考える
実店舗へ広げるとなると、
「できれば有名なチェーンへ」
「店舗数の多いところへ」
と考えることもあります。
もちろん、自社商品と合っているなら有力な選択肢です。
ただ、どの売場を目指すかは、これからどんなブランドとして育てていきたいかによっても変わります。
ECでどんな人に買われ、SNSやメディアでどう知られ、どんな場所で人と出会ってきたのか。
そして、これからどんな場所で、どんな人と出会っていきたいのか。
私は、そうした過去から未来へと続くブランドの歩みを「ブランドの履歴書」と捉えています。
実店舗への展開は、その履歴書に新しい一ページを加えることにもなります。
今、ECで買っている人は、実店舗ならどんな場所へ行くのか。これから新しく出会いたい人は、どんな店に足を運ぶのか。
化粧品であれば、コスメショップ、バラエティショップ、百貨店の化粧品売場、サロンなどが候補になることがあります。
雑貨であれば、生活雑貨店、専門店、セレクトショップ、バラエティショップなど、商品の特徴や目指す方向によって候補は変わります。
さらに、その小売店が大切にしている価値と、自社ブランドとの接点も考えます。
自社の商品ブランドが、その小売店を通してお客様にどんな価値を届けられるのか。
この接点が見えてくると、小売店側にもその商品を扱う理由が伝わりやすくなり、店頭導入を進めやすくなります。
売場の選び方については、こちらの記事で詳しく整理しています。
👉[自社商品に合う売場はどう選ぶ?|最初の展開先を考える視点]
ECと実店舗を、別々の販路にしない
メーカー側から見ると、ECでの販売、SNSでの発信、小売店への卸は、それぞれ別の施策に見えます。
けれど、買う人から見ると、必ずしも分かれていません。
SNSで商品を知り、ECで詳しく調べ、その後、実店舗で商品に出会う。
店頭で初めて商品を知り、その場でスマートフォンから口コミやブランドサイトを見ることもあります。
購入して使ったあと、必要になったときにはECで再購入する人もいます。
つまり、ECから実店舗へ一方向に販路を切り替えるというより、顧客はEC、SNS、店頭を行き来しています。
私は、商品を知り、気になり、実物と出会い、購入し、使い、必要になったときにまた買える。その前後までがつながった状態を「買い場」と捉えています。
実店舗が加わることで、ECで育ててきた関心に「実物と出会える場所」が加わる。
店頭で初めて商品を知った人には、その後ECやSNSでブランドをもっと知ってもらえる。
ECと実店舗を別々に考えるより、それぞれがどんな役割を持つ接点なのかを見る方が、顧客とのつながりは広がります。
では、実際の店頭展開はどう進めるのか
ECで積み上げてきた顧客や反応を、どの売場で、どんな形で活かしていくのか。
その方向が見えてきたら、次は実際の店頭導入に向けた準備です。
まず、ECでの販売実績や、商品が買われている理由を整理する。
次に、実店舗で扱ってもらう商品構成や、卸価格・取引条件を確認する。
そして、自社商品に合いそうな売場を絞り、どの小売店へ、どのようなルートで提案するかを考えていきます。
そこから、バイヤーへの提案や商談、導入後の販促へとつなげていく。
こうした商品展開の具体的な進め方については、こちらの記事で5つのステップに整理しています。
👉[商品を店舗で販売するには?|小売店への卸・店頭展開の5ステップ]
ECから実店舗への展開を整理したい方へ
ECで育ててきた商品やブランドを、次は実店舗へ。
どの売場で、どんな価値を、どう伝えるか。
【商品展開・店頭導入サポート】では、ECでの販売実績や顧客の反応を活かしながら、ブランドの価値や見せ方、売場・販路まで一緒に考えていきます。
こんな売場で、こんな人に出会ってもらいたい。
その思いを、具体的な店頭展開へとつなげていきます。

ブランディングディレクター|事業構造パートナー
松本カヅキ
