こんにちは。
ブランディングディレクター|事業構造パートナーの松本カヅキです。
自社の商品を小売店へ広げようとすると、
「問屋を通さず、小売店と直接取引した方が利益が残るのでは?」
と考えることがあります。
確かに、直接取引なら、その間に問屋の取り分は入りません。
一方で問屋を介することで、自社だけでは届きにくい小売店へ営業してもらえたり、物流や受発注を担ってもらえたりすることもあります。
私はこれまで、複数のブランドメーカー側の立場で、コスメ約500アイテム、雑貨約600アイテムの商品展開・店頭導入に携わってきました。
その経験から感じるのは、直接取引か問屋経由かは、粗利率だけでは決めにくいということです。
見るべきなのは、
誰が、何を担うのか。
直接取引では、小売店への営業から受発注、物流、請求まで、メーカー側が担う範囲が広くなります。
問屋経由では、その一部を問屋に担ってもらいながら、問屋が持つ販路や取引口座を活用して商品を広げていきます。
違いは、問屋の取り分があるかどうかだけではありません。
そして、自社はこれから、どこに力を蓄積していきたいのかです。
小売店との直接取引は、売場との距離が近い
小売店と直接取引する良さの一つは、バイヤーや売場との距離が近いことです。
どんな売場にするのか。
どんなPOPや見せ方がよいのか。
店頭でどんな反応があったのか。
小売店の担当者と話しながら、一緒に売場を考えやすくなります。
そこで返ってきた声を、次の販促や商品企画へ直接戻せることも、メーカーにとって大きな意味があります。
また、営業スタッフを育て、小売店との関係や営業力そのものを自社の強みにしていきたい場合なら、直接取引を増やす意味も大きくなります。
ただし、小売店と直接取引したいと思っても、最初から希望するバイヤーと商談できるとは限りません。
特に大手小売チェーンでは、まず担当バイヤーとの接点をどうつくるか、そのうえで限られた商談時間の中で何を伝えるかという準備も必要になります。
👉[大手バラエティショップなどのコスメ・雑貨バイヤー商談について。]
直接取引は、「一取引あたりの効率」も見る
もう一つ見ておきたいのが、取引の効率です。
直接取引では、営業だけでなく、受発注、出荷、請求、代金回収、問い合わせ対応なども一社ごとに発生します。
たとえば、単価の低い商品を一種類だけ、少量ずつ多くの店舗へ納品するとなると、粗利率は高くても、運用の負担が大きくなることがあります。
ある程度単価が高い商品なのか。
複数のSKUをまとめて展開できるのか。
一回あたり、どの程度の発注が見込めるのか。
「直接の方が利益が残る」だけではなく、その取引を維持するために、どのくらいの人と時間が必要になるかも見ていきます。
問屋を通すことで、外部の営業力や物流を使える
一方、問屋を介して商品を広げる方法もあります。
問屋には、それぞれ既存の取引先や得意な販路があります。
メーカーがまだ取引口座を持っていない小売企業へ提案してもらったり、複数の小売店への営業や、受発注・物流をまとめてもらったりすることもできます。
自社では、商品企画やブランドづくり、プロモーションに人や時間を使いたい。
そう考える場合であれば、営業や物流の一部を外部の力で補うという選択もあります。
私はクライアントに問屋の役割を説明するとき、「アウトソースに近い考え方です」とお伝えすることがあります。
営業や物流、受発注など、自社ですべてを抱えなくてもよい機能の一部を、外部に担ってもらう。その対価として、問屋の取り分があると考えると分かりやすいからです。
ただし、単なる業務の外注とも少し違います。
問屋には、既存の販路や小売店との取引口座、バイヤーとの関係など、問屋自身が積み上げてきたものがあります。
そうした力も活用しながら商品を広げられるところに、問屋を介する意味があります。
もちろん、その役割を担ってもらう分、メーカーの取り分は変わります。
卸価格や掛率、それぞれが担う価値についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
👉[卸価格の相場ってどう決まる?|ブランド力で変わる“価値の分け方”]
問屋は、持っている販路の多さだけでは選ばない
問屋を活用する場合、次に決めるのは、どの問屋と組むかです。
ここは、営業ルートを考えるうえで、私がかなり重要だと思っているところです。
たくさんの小売店と取引していることは、もちろん一つの強みです。
それと同時に見たいのが、
どの小売店へ提案してくれたのか。
バイヤーからどんな反応があったのか。
なぜ採用されたのか。あるいは、なぜ見送られたのか。
そうした情報を、メーカー側へどこまで戻してくれる相手なのかということです。
「いろいろ営業しています」と聞いていても、その先が見えなければ、メーカー側は次の戦略を立てにくくなります。
価格が合わなかったのか。
売場との相性なのか。
商品の伝え方なのか。
タイミングだったのか。
売場から返ってきた情報は、次の商品展開を考える材料になります。
問屋を選ぶときには、販路の数だけでなく、一緒に商品展開を考えていける相手かという見方も持っておきたいところです。
自社に、何の力を残していきたいか
直接取引か問屋経由かを考えるとき、もう一つ見ておきたいことがあります。
小売店との関係や営業力を、自社の強みとして育てていきたいのか。
それとも、商品企画やブランドづくり、プロモーションに、より力を集中していきたいのか。
営業力や小売店との関係、販路、そこから得てきた知見も、事業の中に残っていくものです。
私は、こうしたものも事業の「財」の一つとして捉えています。
これから自社の中に、どんな力を蓄積していきたいのか。
何を、これからの事業に残していきたいのか。
そこから考えると、粗利率だけでは見えなかった営業ルートの選び方も見えてきます。
直接取引と問屋経由を、どう組み合わせるか
ブランドメーカーによっては、小売店との取引を基本的に直接取引、あるいは問屋経由に統一しているところもあります。
一方で、
「この小売店とは直接取引する」
「この販路は問屋を通す」
と、小売店や販路ごとに使い分けているブランドメーカーも少なくありません。
複数のルートを使う場合には、誰がどの小売店へ営業し、どこから納品するのかを整理しておく必要があります。
小売企業や取引形態によっては、一つのJANコードに対して納入元を一社に定める「1JAN1ベンダー」と呼ばれる運用もあります。
同じ商品を複数のルートから同じ小売店へ提案してしまうと、納入元や価格条件が複雑になることがあります。
直接取引か、問屋経由か。
営業ルートそのものが目的ではありません。
自社の商品が、どんな売場で顧客と出会い、実物を手に取ってもらえる場所をどう増やしていくのか。
私は、商品を知るところから、店頭での出会い、購入、その後の再購入までがつながった状態を「買い場」と捉えています。
直接取引も問屋経由も、その買い場を広げていくための方法の一つです。
商品展開全体の進め方については、こちらの記事で整理しています。
👉[商品を店舗で販売するには?|小売店への卸・店頭展開の5ステップ]
自社に合う営業ルートを整理したい方へ
直接取引を増やすのか。
問屋を活用するのか。
それとも、小売店や販路によって組み合わせるのか。
商品単価や取扱商品数、狙う売場、自社で持ちたい機能によって、その判断は変わります。
自社の商品では、どのルートから、どのように広げていくのか。
商品展開・店頭導入サポートでは、自社商品の現在地を確認しながら、商品の価値、価格、売場、販路、営業ルートを一緒に整理しています。

ブランディングディレクター|事業構造パートナー
松本カヅキ
