こんにちは。
ブランディングディレクター|事業構造パートナーの松本カヅキです。
「ECで少しずつ売れるようになってきたので、次は実店舗にも広げたい」
自社ECやモール、SNSなどを通して商品が知られ、購入も増えてきた。
そうなると、次の販路として小売店への展開を考えるのは、自然な流れだと思います。
そこで、
「どのお店なら置いてもらえそうか」
「どうすればバイヤーと商談できるか」
と考え始める方も多いかもしれません。
ただ、その前に一度、確かめておきたいことがあります。
「この商品は、なぜ今ECで買われているのか」
売上の数字ではなく、買われている理由の方です。
そこが見えていないまま売り先を探し始めると、店頭でも同じように伝わるはずだ、という前提のまま進んでしまうことがあります。
ECから実店舗へ広げることは、販売場所を一つ増やすだけではありません。
ECでは、自社の商品ページで詳しく説明でき、価格や見せ方も自分たちで管理できます。
一方、店頭では、他の商品と一緒に並び、小売店や問屋など新しい役割も加わります。限られた売り場の中で、商品の価値を伝える必要もあります。
この記事では、ECやネット販売から外部の小売店へ販路を広げるときに、メーカー・ブランド側で整理しておきたいことをご紹介します。
ECで「売れている理由」を、一度見直してみる
まず見ておきたいのは、現在ECでどのように商品が売れているのかです。
売上があることだけではなく、
誰が買っているのか。
どこで商品を知ったのか。
何に興味を持ったのか。
購入前に、どのような情報を見ているのか。
そうした流れまで見てみます。
SNSで商品の存在を知り、投稿を何度か見たあとにECへ来ているのかもしれません。
商品ページの説明や口コミを読みながら、比較して購入している人もいるでしょう。
すでにブランドを知っている人が、商品名を検索して直接買いに来ている場合もあります。
同じ「ECで売れている」という状態でも、その理由はさまざまです。
この違いは、実店舗へ広げるときに関係してきます。
ECでは、商品ページをスクロールしながら、特徴、使い方、背景、口コミなどを時間をかけて確認できます。
店頭では、その説明をすべて読んでもらえるとは限りません。
棚の中で商品を見つけ、短い時間で興味を持ち、手に取る。
ECで成立していた商品の伝わり方が、そのまま店頭でも成立するとは限らないのです。
一方で、実店舗には、画面だけでは分かりにくかったものを確かめてもらえる役割があります。
香りや質感、色、サイズ、重さ、手触り、使い方。何を確かめたいかは商品によって違います。
反対に、実物に触れること以上に、詳しい説明を読んだり、使い方を理解したりすることが重要な商品もあります。
自社の商品にとって、実店舗はどのような役割を持つのか。
そこが見えてくると、どの売り場と相性がよいのかも考えやすくなります。
ECの価格構造のまま、店頭へ卸せるか
ECから実店舗へ広げるとき、見落としやすいのが価格です。
ECでは、メーカーやブランドが顧客へ直接販売できます。
一方、小売店へ商品を卸す場合には、小売店側にも販売するための取り分が必要です。問屋や代理店を介するのであれば、営業や物流など、さらに別の役割も加わります。
そのため、ECで設定していた販売価格と原価のまま卸価格を設定すると、メーカー側に十分な利益が残らないことがあります。
特に、もともとECだけで販売する前提で商品をつくっていた場合には、価格や原価、商品構成などにひと工夫が必要になることもあります。
販売の仕組みが変われば、そこに加わる役割も変わります。
問屋や代理店についても、単に中間の取り分が増えると見るのではなく、営業や物流など、自社で持たない機能の一部を外部に担ってもらう、と捉えることもできます。
誰が何を担い、その中で自社にどれだけ利益が残るのか。
実店舗へ広げるときには、価格も改めて見ておきたいところです。
卸価格や掛率については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
👉 [卸価格の相場ってどう決まる?|ブランド力で変わる“価値の分け方”]
「どこに置くか」を、店舗数だけで決めない
実店舗への展開を考えると、
「できれば有名なお店に置いてもらいたい」
「なるべく店舗数の多いチェーンへ広げたい」
と考えることもあると思います。
もちろん、それが商品に合っている場合もあります。
ただ、店舗数や知名度だけで展開先を決めると、自社商品の見られ方と売り場が合わないことがあります。
・ECでどのような顧客に買われているのか。
・これまでどこで販売され、これからどのような顧客との接点を増やしたいのか。
そうした現在地から、次の展開先を考えていきます。
・ECで育ってきたのか。
・専門店で丁寧に紹介されてきたのか。
・どのような小売店へ広がってきたのか。
その一つひとつが積み重なり、いわばブランドの履歴書になっていきます。
実店舗へ出ることは、販売先を増やすだけでなく、その商品がこれからどのように見られていくかにもつながります。
ECと実店舗を、別々の販路にしない
ECから実店舗へ広げるとき、もう一つ見ておきたいことがあります。
それは、ネットと店頭を別々に考えすぎないことです。
メーカー側から見ると、
ECで販売する。
SNSで情報を発信する。
小売店へ商品を卸す。
それぞれ別の施策に見えます。
けれど、買う人から見れば、必ずしも分かれていません。
SNSで商品を知り、少し気になっていた。
買うかどうか迷っていたところ、実店舗で商品を見つける。
そこで実物に触れ、気になっていたことを確かめる。
その場で口コミやブランドの情報を調べることもあります。
購入して使い、気に入ったあと、必要になったときにはECや別の店舗でも買える。
こうして見ると、
EC → 実店舗
と販路が切り替わっているというより、顧客が一つの流れの中で、それぞれの場所を行き来しています。
私は、商品を知り、店頭で実物に出会い、購入し、その後もう一度買えるところまでがつながった状態を、「買い場」と捉えています。
実店舗へ広げるのであれば、ECをやめて店舗へ移るのではなく、それまでECやSNSで育ててきた関心を、店頭での出会いにつなげる。
そして、店頭で生まれた接点を、購入後や再購入へつないでいく。
その前後まで見ておくと、ECと実店舗を、それぞれ違う役割を持った接点として考えやすくなります。
実店舗へ広げるには、何を準備すればよいのか
ECから実店舗へ販路を広げるときには、販売先を増やすことだけでなく、商品を取り巻く条件そのものを見直すことになります。
ECで売れている理由。
実店舗が担う役割。
卸販売を前提にした価格。
どの売り場で、どのように見てもらうのか。
EC、SNS、実店舗、購入後までのつながり。
ここまで見えてくると、次に気になるのは、
「では、実際には何を、どの順番で準備すればよいのか」
ということだと思います。
商品を小売店へ卸し、店頭で販売していくまでの全体像は、こちらの記事で5つのステップに整理しています。
👉 [商品を店舗で販売するには?|小売店への卸・店頭展開の5ステップ]
商品の価値と売り場との相性、価格、販路・営業ルート、バイヤー商談、導入前後の販促と再購入まで。
ECから実店舗へ進むときに確認したい実務を、一つの流れとしてまとめています。
ECから実店舗への展開を整理したい方へ
ECで積み上げてきたものを活かしながら、実店舗へ広げるために見直した方がよい部分もあります。
現在の商品、価格、顧客、販売実績を見ながら、どこはそのまま活かせるのか。どこは実店舗への展開に合わせて整えた方がよいのか。
商品展開・店頭導入サポートでは、自社商品の現在地を確認しながら、
どの価値を、
どの売り場で、
どう伝えるか。
そして、何から進めるか。
を一緒に整理しています。

ブランディングディレクター|事業構造パートナー
松本カヅキ
