本記事でご紹介する“カサ構造ブランディング”は、
中小企業のブランド価値を“仕組み”として再設計する『しくみブランディング』のアプローチのひとつです。
すでにある事業や商品を、“意味”で束ね、構造で整えていく視点を解説します。

中小企業にとって、ブランディングは本当に必要なのか?
「うちはいろいろ手がけていて、まとめきれない」──そんな声を、これまで何度も耳にしてきました。
でも、事業が“バラバラに見える”のは、ある意味当然。
そもそも中小企業の多くは、「これは面白そうだ」「いけそうだ」という思いつきや直感から始まっていることが自然な流れです。
大切なのは、バラバラな状態をどう“再設計”し、活かすか。
今回は、そんな中小企業におすすめしたい、バラバラな事業や商品をひとつの“カサ構造”として捉え直す視点を、「しくみドコロ」らしくご紹介します。
いわば、“カオスを束ねるための仕組み化”の第一歩。
すでにある事業や商品を、戦略的に活かすブランディングの考え方です。
中小企業の事業展開は「バラバラで自然」──だからこそ整える視点が必要
事業の現状が多様化する中、次の一手を見出すのが難しい──。
そんな悩みを抱える中小企業は少なくありません。
特に、差別化のために“縦軸(技術やサービス内容の進化)”や“横軸(販路や対象顧客層の拡大)”ばかりに注力してしまうと、知らず知らずのうちに大手との資本勝負に巻き込まれることも。
だからこそ、もう一つの軸、“奥行き”──つまり構造や意味で整える視点が重要になってきます。
“カサ構造”で捉えるブランディングとは?
今回紹介するのは、「バラバラに見える事業や商品を、ひとつの“カサ”で包むように構造化・再定義して整える」という考え方です。
この“カサ構造”は、事業全体を貫く上位概念=ブランドの軸を見出し、ブランディングの設計図として活用する「見せ方・伝え方の仕組み」です。
✔「事業が広がりすぎてまとまらない」
✔「商品・サービスの関連性が見えづらい」
──そう感じている企業ほど、この視点が効いてきます。
“カサ構造”は2段階で考える
この“カサ構造”は、大きく分けて2段階の思考プロセスで整理できます。
STEP1:意味で束ねる
まずは、現在展開している事業や商品を丁寧に棚卸し、
それらを包括できる“共通する意味や価値”を探っていきます。
それが、上位の「カサ」となる要素です。
たとえば…
- ヘアミストを販売したい
→「特定の髪型の普及」や「朝の時短美容」というテーマで包む - Webデザインを提供している
→「中小企業向けマーケティング支援」パッケージの一部として見せる - キシリトールガムを扱っている
→「美容習慣をつくる生活アイテム」のひとつとして再定義する
このように、単体ではバラバラに見える事業も、
「誰に」「どんな価値を」「どんな文脈で」届けているかという視点で見直すと、自然と共通の“傘”が見えてきます。
STEP2:構造で整える
続いて、その“カサ”の中身を整える段階です。
ここでは、ブランディングを3層構造で捉えることが役立ちます。
芯(ブランドの軸) = 価値・強み・方向性
骨組み(機能) = 商品設計、価格戦略、導線、社内浸透
表面(表現) = ロゴ・デザイン・トーン・発信内容
このように「芯→骨組み→表面」へと、内から外へ順に設計することで、事業や発信がバラバラにならず、伝達力の高いブランド構造ができあがっていきます。
※ この“3層構造”の整理は、理解しやすくするための「補助線」であり、
“カサ構造”の本質は、「事業や商品を意味で束ね、ブランドとして再設計すること」にあります。
おわりに|“意味で束ねて、構造で整える”──中小企業のための「カサ構造ブランディング」
「何を新しく始めるか」ではなく、「すでにある事業をどう活かすか」。
この視点こそが、限られたリソースで戦う中小企業にとって、ブランディングの要になります。
これが、「意味で束ねて、構造で整える」──
中小企業のための“カサ構造ブランディング”という考え方です。
次回は、「目利きブランディング」という、もう一つの実践的アプローチをご紹介します。
ぜひ、あわせて読んでみてください。