こんにちは。
ブランディングディレクター/事業構造パートナーの松本カヅキです。
この記事では、中小企業のブランディングで必要になる整理視点のひとつとして、「目利き」について整理します。
ここでいう目利きとは、特別な才能や鑑定眼の話ではありません。
これまで事業の中で重ねてきた判断を見直し、選んできた基準を言葉にしていくための視点です。
強みを無理につくるのではなく、すでに積み重ねてきた判断の中から、事業らしいモノサシの手がかりを見つけていく。
それが、ここでいう“目利き”です。
“目利き”とは、選んできた基準を言葉にする整理視点
目利きという言葉を聞くと、「良いものを見抜く力」や「専門家だけが持つ感覚」のように思われるかもしれません。
けれど、中小企業のブランディング整理で扱う目利きは、もっと日々の事業に近いものです。
たとえば、
・これはお客様に喜ばれそうだと思った
・これは続けていきたいと感じた
・これは自分たちらしいと判断した
・これは少し違うと感じて選ばなかった
・これは広げない方がいいと考えた
こうした判断は、普段はあまり意識されないかもしれません。
けれど、それらの中には、何を大事にしてきたのか、何を基準に選んできたのかという手がかりが残っています。
目利きとは、その判断の積み重ねをあとから見直し、選んできた基準を言葉にしていく整理です。
これは、強みを無理に探す作業ではありません。
これまでの選択の中にある基準を見つけ直す作業です。
中小企業の事業には、これまで選んできたものがある
中小企業の事業は、最初からきれいな設計図どおりに育つとは限りません。
理念やビジョンを最初に掲げて、そこから一直線に展開してきた事業ばかりではありません。
むしろ多くの場合、
お客様の声、取引先からの相談、市場の変化、現場で見えた手応えに応じて、その時々で判断しながら事業を前に進めてきています。
扱ってきた商品。
続けてきたサービス。
大切にしてきた顧客。
引き受けてきた仕事。
あえて手を出さなかった領域。
それらは、すべて何らかの判断の結果です。
外から見ると、少しバラバラに見える商品やサービスでも、一つひとつをたどっていくと、そこに共通する感覚が残っていることがあります。
売れそうだから、だけではない。
効率がいいから、だけでもない。
その事業なりに、見ていたもの、感じていたもの、選んできたものがある。
目利きの整理では、そこに残っている判断の手がかりを見ていきます。
なお、強みや選ばれる理由を言葉にしようとして少し止まる感覚については、こちらの記事でも整理しています。
👉 強みを言葉にできないとき|選ばれる理由の前にある「選んできた理由」
何を選び、何を選ばなかったのかをたどる
目利きで見るのは、「何を選んできたのか」だけではありません。
同じくらい大切なのが、「何を選ばなかったのか」です。
事業を続けていると、さまざまな選択肢が現れます。
新しい商品を扱うか。
新しいサービスを始めるか。
ある依頼を引き受けるか。
ある領域に広げるか。
あるやり方を採用するか。
そのたびに、事業は小さな判断を重ねています。
目利きの整理では、たとえば次のような問いを見ていきます。
・これまで何を選んできたのか
・なぜ、それを選んできたのか
・何に手応えを感じてきたのか
・どんな仕事や商品に違和感を持ってきたのか
・何をあえて広げなかったのか
・何を選ばずに残してきたのか
選んだものの中には、大切にしてきた価値が残っています。
一方で、選ばなかったものの中にも、自分たちらしい基準が残っていることがあります。
何を選んだかだけでは、事業の輪郭はまだ曖昧なことがあります。
何を選ばなかったのか。
何に違和感を持ってきたのか。
どこには広げなかったのか。
そこまで見ていくことで、その事業が何を大事にしてきたのかが、少しずつ見えやすくなります。
選ぶときに見えていたものが、判断のモノサシになる
一つひとつの選択には、それぞれ事情があります。
そのときのお客様。
取引先との関係。
市場の流れ。
人員や設備の制約。
売上や利益の見込み。
条件はいつも同じではありません。
それでも、振り返ってみると、選択の奥に共通して流れているものが見えてくることがあります。
たとえば、
・安心して勧められるものを選んできた
・長く続く関係を大切にしてきた
・手に取った人に残る感覚を重視してきた
・短期的な売れやすさより、続けられる価値を見てきた
・自分たちのやり方と合わないものは広げなかった
こうした共通項は、単なる好みではありません。
これまで判断を支えてきた基準であり、事業のモノサシの手がかりです。
目利きで見えてくるのは、いきなり完成された強みではありません。
まず見えてくるのは、何を良しとして選んできたのかという判断のモノサシです。
そのモノサシが見えてくると、強みや選ばれる理由も、あとから少しずつ言葉になりやすくなります。
“目利き”は、感覚として重ねてきた判断を言葉に戻すこと
その瞬間には、理由をはっきり説明できなかった判断もあるはずです。
「これはいい」
「これは違う」
「これは続けたい」
「これは今は選ばない」
「これは自分たちらしくない」
そうした判断は、当時は感覚的なものだったかもしれません。
けれど、あとから丁寧にたどっていくと、そこには事業を支えてきた考え方が残っていることがあります。
目利きの整理では、その感覚を否定せず、ただの勘として片づけるのでもなく、事業の判断基準として言葉に戻していきます。
だから、強みや価値を考えるときも、外から新しい言葉を持ってくる前に、まずはこれまでの選択を振り返ることから始められます。
そこには、まだ言葉になっていない判断の基準があります。
“目利き”が整うと、戦略や実践に入りやすくなる
目利きが整うと、次の戦略や実践にも入りやすくなります。
なぜなら、何を基準に選んできたのかが見えてくると、これから何を選ぶべきかも考えやすくなるからです。
たとえば、
・新しい商品を扱うかどうか
・どのサービスを伸ばすか
・どの顧客層を大切にするか
・どんな発信をするか
・外部パートナーに何を依頼するか
・どこまで事業を広げるか
こうした判断をするとき、毎回ゼロから考える必要はありません。
自分たちは何を良しとしてきたのか。
何を選び、何を選ばなかったのか。
どんな価値を残したいのか。
その基準が見えていると、戦略や実践は、単なる思いつきではなく、これまでの事業の積み重ねとつながりやすくなります。
目利きは、ブランディングの完成形ではありません。
けれど、戦略や実践に入る前に、事業の判断基準を整えるための重要な整理視点です。
整理全体の中で、“目利き”をどう位置づけるか
目利きは、中小企業のブランディング整理における4つの視点のひとつです。
事業を意味で捉え直す「カサ構造」。
選んできた基準を言葉にする「目利き」。
変えにくいものと動かせるものを分ける「ハードとソフト」。
相手の中に何が残っているかを見る「体験価値」。
この4つをあわせて見ることで、事業の見え方は少しずつ整っていきます。
目利きだけですべてが決まるわけではありません。
けれど、何を選び、何を選ばなかったのかをたどることで、自分たちなりの判断のモノサシが見えてくる。
そのモノサシが、次の戦略や実践を考えるときの土台になっていきます。
整理全体の考え方を見たい方は、こちらの記事をご覧ください。
👉 中小企業のブランディングは整理から始まる|実践につなげる4つの視点
しくみブランディング®|松本カヅキ
― ブランディングは、整理で仕組みになる。 ―

