店頭展開をめざす商品づくりにおいて、避けて通れないのが「価格設計」の話です。
原価・利益・掛率・問屋の粗利…それぞれをどう設計しておくかで、商品がどこまで広がるかが決まってきます。
今回は、いわゆる「卸価格」周りのリアルな数字感と、商談の場に立つ前に整えておくべき視点についてお話しします。
小売店に卸すときの価格設計
商品が店頭に並ぶまでには、ざっくりこのような流れがあります:
メーカー(あなた)→ 問屋 → 小売店(バイヤー) → 消費者
商品の価格は通常、希望小売価格 × 掛率 = 卸価格という形で設計されます。
この「掛率(かけりつ)」は、販売先によってある程度の相場があり、以下が実務上よくあるパターンです:
<販路の例> | <小売店への掛率(目安)> |
バラエティショップ | 約60〜65% |
ドラッグストア | 約60〜70%(食品以外) |
セレクトショップ | 約55〜60%(交渉あり) |
つまり、希望小売価格が2,000円なら、掛率60%で卸価格は1,200円。
ただし、ここで注意したいのが問屋を挟むケースです。
問屋を活用する場合の「もう一段深い逆算」
問屋を使って販路を広げる場合、小売への卸価格からさらに20%前後の粗利を問屋が求めてくるのが一般的です。
たとえば──
- 希望小売価格:¥2,000
- 小売店への卸掛率 60% → 小売納入価格:¥1,200
- 問屋粗利20%を確保 → メーカー納入価格:約¥960
つまり、あなたが受け取る金額は、希望小売価格の48%(= ¥960)にすぎないことになります。
これに原価や製造ロット、物流費をのせて、まだ利益が出るのか?を見極めなければいけません。
返品条件で「通るか、通らないか」が決まることも
最近は、バイヤーから「返品は可能ですか?」と聞かれるケースが非常に多いです。
返品OKとすることでバイヤー側のリスクが軽減され、商談が通りやすくなります。
ただし、その分メーカー側にリスクが移るので、価格設計の中に返品リスク分のマージンをあらかじめ含める必要があります。
商談に「上がれない」ことが最も多い壁
バイヤーとの商談以前に、問屋に「扱えません」と言われるケースが実はかなりあります。
その理由の多くは:
- 掛率の設計が現実的でない
- 問屋の粗利が確保できない
- 初回ロットや納期が現場と合わない
- 返品不可によるリスクが大きい
つまり、売れる・売れない以前に、“数字が合わない”というだけで門前払いになるわけです。
最後に:ブランド力が“価格の説得力”を高める
ここまで見てきた通り、価格設定とは数字の積み上げではありますが、
その数字に説得力を持たせられるかどうかは、商品がもつブランド力=期待感にも大きく左右されます。
「これは売れそうだ」「SNSで見かけたことがある」など、
そうしたブランドとしての存在感があるだけで、上代(小売価格)への抵抗感が減ったり、条件交渉が柔らかくなったりするのです。
価格や販路の話にも、“見せ方”や“語り方”が関係してくる。
ブランディングの力は、そんなところにもじんわりと効いてきます。
次回予告(Vol.3)
販路選定とバイヤー交渉術:「どこに売るか」で全体戦略が変わる。
販路ごとの特性や、商談に進む前に押さえておくべき条件設定などをお届けします。
【Vol.3】バイヤーに“選ばれる”ための準備とは?|店頭導入前に整えるしくみ