「中小企業にブランディングって本当に必要?」
「商品や事業がバラバラで、まとめるなんて無理じゃない?」
そんな声を、これまで何度も聞いてきました。
特に中小企業では、「見た目を統一すればブランディングになる」といった誤解がまだ根強く、
ロゴやパンフレットだけ整えても、事業全体の“ブランディングの仕組み”が機能しておらず、
価値が十分に伝わっていないケースも多く見られます。
でも実は、「バラバラに見えるもの」を無理やり一つに揃える必要はありません。
むしろ、“なぜそれを選んできたのか”という「目利きの視点」こそが、
ブランドの芯=“らしさ”として活かせる大きな資源になります。
この記事では、事業や商品が多様な中小企業に向けて、
ブランディングを“仕組みとして整える”ための実践的な考え方をご紹介します。
※この記事は、「中小企業のブランディングは“カサ構造”で整える」編の補足記事です。

中小企業のブランディング整理のヒントとは?
中小企業では、商品や事業の展開がついつい広がりがちだからこそ、
ブランド全体の構造をどう設計・構造化するかが鍵になります。
中小企業ブランディングの誤解と“目利き視点”の活かし方
中小企業の会社概要やパンフレットを見ると、立派な理念が書かれていることは少なくありません。
けれど、それが顧客や従業員、取引先との接点にどう活かされているかというと――
なかなか「機能している」と言える状態にはなっていないことも多いように感じます。
これは責めるというより、当然のこととも思います。
そもそも、創業のスタート地点を思い出すと…
多くの中小企業は、理念ありきで始まったというより、
「この商売、面白そうだな」「これはイケそうだ」と思ったところからスタートし、
事業計画書を書くタイミングで理念を考え、そこからは日々の商売に邁進してこられた――
という流れのほうが自然です。
だからこそ、「事業が広がっていく」「サービスが多様化していく」のはごく当然のことで、
中にはリスク分散やボリューム戦略として、多品種展開をしている企業も多く見られます。
多様な事業を活かす“ブランディングの仕組み化”という視点
ただ、そのような背景があるからこそ、あらためてブランド設計をしようとすると、
「うちは多すぎてまとまらない」「方向性がバラバラで無理」と、足が止まりがちです。
でも、実はそういう状態の企業ほど、ブランディングを“構造的に仕組み化する”視点が力を発揮します。
商品・サービスの多様性そのものを「ブレ」ではなく「ブランドの厚み」と捉えるためには、
選択基準や共通項を見える化し、それを軸として整理する仕組みが必要なのです。
※「ブランディングを商売の仕組みに落とし込む」具体的な考え方については、こちらの記事も参考にどうぞ:
👉中小企業のブランディング|儲けに直結する仕組み化の方法
「目利きブランディング」でブランドの軸を再構成する
前回の記事「中小企業のブランディングは“カサ構造”で整える」では、
「包括するようなカサ(傘)を設ける」ことをおすすめしましたが、
それでもしっくりこない場合に、もう一つのアプローチがあります。
それが、「目利きブランディング」という考え方です。
どういうことかというと、
バラバラに見える商品やサービスを、
「選び取ってきた目利き力」こそがブランドだと捉える方法です。
“判断のモノサシ”を構造化して「らしさ」を設計する
それぞれのサービスを導入したとき、あなたやチームはどういう判断でそれを選んだのか。
何に惹かれ、どんな価値を見出したのか。
そこには、実は共通する“判断のモノサシ”があるはずで、
それを言語化していくことで、ブランドの「らしさ」が自然と浮かび上がってきます。
いわゆる「こだわりを洗い出す」作業は、こうした実践の中でこそ意味を持つのです。
中小企業のブランディングにとって、「なんとなく選んだ」が最ももったいない資源の埋もれ方だといえるでしょう。
ブランドを“浮かび上がらせる仕組み”とは?選択の理由を見える化する
今回も「しくみドコロ」らしく、実務目線でかなりツッコんだ内容になりましたが(笑)、
結局のところ、ブランドの仕組み化は、どんな視点で判断してきたかを見える化することから始まるのだと思います。
ぜひ、「目利きブランディング」という視点も、頭の片隅に置いてみてください。
また別の視点や実践例も、次の機会にご紹介しますね。
※「カサ構造」と「目利きブランディング」は、それぞれ異なる切り口ですが、どちらも“すでにある事業・商品を活かす”ブランディング戦略です。
どちらも中小企業にとって無理のないブランディングの設計法として、おすすめです。
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