こんにちは。
ブランディングディレクター|事業構造パートナーの松本カヅキです。
自社の商品を小売店へ卸そうとすると、
「卸価格はいくらにすればいいのか」
「何掛けくらいが普通なのか」
という疑問が出てきます。
卸価格や掛率には、販路ごとのおおよその目安があります。ただ、実際の商品展開では、その数字に当てはめれば終わりではありません。
原価はいくらなのか。小売店は何を担うのか。問屋を介するのか。物流や販促、返品などの条件はどうなっているのか。
そして、その条件でメーカー側にも利益が残り、継続して商品を広げていけるのか。
私はこれまで、複数のブランドメーカー側の立場で、コスメ約500アイテム、雑貨約600アイテムの商品展開・店頭導入に携わってきました。
その経験をもとに、メーカー側から見た卸価格と掛率の考え方を整理します。
卸価格・掛率・値入率の基本|相場の目安はどのくらい?
まず、卸取引でよく出てくる言葉を整理しておきます。
卸価格
メーカーや問屋などが、取引先へ商品を卸すときの価格です。
掛率
希望小売価格に対して、卸価格が何%になるかを表します。
たとえば、希望小売価格2,000円の商品を掛率60%で小売店へ卸す場合、
2,000円 × 60% = 1,200円
が小売店への卸価格になります。
値入率
小売店側から見て、販売価格に対してどの程度の利益を見込んで仕入れるかを見る割合です。
希望小売価格2,000円の商品を1,200円で仕入れる場合、値入率は40%です。
メーカー側では「何掛けで卸すか」、小売店側では「どのくらい値入れが取れるか」という見方になります。
では、掛率はどのくらいが一般的なのでしょうか。
私がメーカー側で関わってきた取引を含む、実務上の一例としては、
- バラエティショップ:約60〜65%
- ドラッグストア:約60〜70%(食品以外)
- セレクトショップ:約55〜60%
といったレンジがあります。
ただし、これは業界全体の一律の基準ではありません。商品カテゴリー、ブランド、販売実績、販路、取引条件などによって変わります。
卸価格は、原価とメーカー利益だけでは決めない
メーカー側からすると、
「原価がこれだけだから、この卸価格なら利益が残る」
と考えたくなります。
もちろん、メーカーに利益が残ることは必要です。ただ、小売店へ商品を卸す場合には、消費者が支払う販売価格の中から、小売店側の利益も確保する必要があります。
さらに問屋を介するのであれば、問屋の取り分も必要です。物流費、販促費、返品リスクなどもあります。
つまり、原価から積み上げてメーカー希望の卸価格を決めるだけではなく、
その商品が、どんな流れで顧客まで届くのか。
という方向からも価格を見る必要があります。
「お客さまが払う100」を、誰がどう担うのか
私は卸価格を考えるとき、消費者が支払う価格全体を「100」として見ることがあります。
その100の中には、商品そのものだけでなく、次のような役割があります。
つくる
商品企画、開発、製造、品質
伝える
デザイン、情報発信、販促、接客
届ける
営業、受発注、物流、売場、顧客との接点
| お客さまが払う100のうち | どんな価値? | 例 |
| つくる力 | 商品やサービスそのもの | 開発力・企画力・品質 |
| 伝える力 | 魅力を伝えて選ばれる力 | デザイン・SNS・接客・販促 |
| 届ける力 | 体験や仕組みで信頼をつくる力 | 配送・サポート・店舗体験 |
※ここでいう「100」は、実際の掛率や利益配分を示すものではなく、顧客が支払う価格の中に、どのような価値や役割が含まれているかを考えるためのイメージです。
メーカーがすべてを担う場合もあれば、小売店や問屋がその一部を担う場合もあります。
卸価格は、「メーカーがいくら欲しいか」だけではなく、メーカー・問屋・小売店が、それぞれ何を担うのかと一緒に考えるものです。
商品のブランド力や販売実績、メーカー側の販促力なども、掛率や取引条件に影響する要素です。
ただし、「ブランド力があるから何掛け」と単純に決まるものではありません。
問屋を通す場合は、もう一段価格を逆算する
小売店へ直接卸す場合と、問屋を通す場合では、メーカーが受け取る金額も変わります。
たとえば、一例として、
希望小売価格:2,000円
小売店への掛率:60%
問屋から小売店への卸価格:1,200円
とします。
この1,200円に対して、仮に問屋が20%の粗利率を確保する条件だとすると、メーカーから問屋への卸価格は約960円です。
つまり、希望小売価格2,000円の商品でも、メーカーが受け取る金額は約960円になる計算です。
そこから原価、物流費、販促費などを差し引いても、事業として継続できる利益が残るかを見ます。
もちろん、問屋の条件も一律ではありません。商品や販路、問屋が担う役割などによって変わります。
また、問屋は単に「間に入って取り分を取る存在」ではありません。営業、受発注、物流に加えて、既存の販路や小売店との取引口座などを活用できる場合があります。
その役割をどこまで担ってもらうかによって、価格の見方も変わります。
直接取引と問屋経由の違いについては、こちらの記事で詳しく整理しています。
👉[小売店へ直接卸すか、問屋を通すか?|メーカーが販路と役割で考える違い]
卸価格は、売場や取引条件と一緒に考える
掛率だけで、取引条件の良し悪しが決まるわけでもありません。
たとえば確認しておきたいのは、
- 返品条件
- 支払い条件
- 物流方法
- 初回ロットや導入店舗数
- 販促物やテスター、什器の負担
- 販売員が必要か
- 導入後の販促を誰が担うか
などです。
一見すると掛率がよくても、返品や物流、販促負担まで含めると、メーカー側に残る利益は変わります。
また、どの売場へ展開するかによって、求められる販促や物流、商品の伝え方も変わります。
卸価格は、売場や販路、取引条件と切り離して決めるものではありません。
商品を小売店へ卸し、店頭販売まで進める全体の流れはこちらの記事で整理しています。
👉[商品を店舗で販売するには?|小売店への卸・店頭展開の5ステップ]
卸価格が合わないとき、どこを見直すか
ここまでを自社の商品に当てはめて計算してみると、
「この条件では、メーカー側に十分な利益が残らない」
ということもあります。
実際の商品展開では、ここからの判断が重要です。
まだ販売前で、上代(希望小売価格)を決めていない商品であれば、卸価格だけではなく、上代そのものから見直すこともあります。
上代は、単に原価へ利益を足して決める数字ではありません。
この商品を、どのくらいの価値を持つものとして市場へ出すのか。
どの売場で、どの価格帯の商品と並び、顧客からどう見られたいのか。
上代は、商品の価値や市場での受け取られ方、売場での位置づけまで含めた商品戦略が反映される、メーカー側にとって重要な価格です。
もちろん、利益が足りないから上代を高くすればよい、という話ではありません。商品の価値、カテゴリーの価格帯、顧客からの期待、販売実績などを見ながら、その上代に説得力があるかを考えます。
一方、すでにECなどで販売していて、上代が市場に定着している商品では、価格だけを簡単に動かせるとは限りません。
その場合は、原価なのか、商品構成なのか、流通の組み方なのか、取引条件なのか。
どこを残し、どこなら動かせるのか。
そこを見ていきます。
ECから実店舗へ広げるときに、価格構造そのものを確認する必要がある理由についてはこちらでも紹介しています。
👉[ECから実店舗へ販路を広げるには?|小売店への卸・店頭展開前に整理したいこと]
ここまで来ると、「何掛けが普通か」という知識だけでは決められません。
卸価格だけを見るのではなく、上代や原価、商品構成、売場、営業ルート、取引条件などを行き来しながら、自社の商品展開として成立する形を探すことになります。
自社商品の価格構造や取引条件を整理したい方へ
「相場や計算方法は分かった。でも、自社の商品では、どの数字や条件を動かすのがよいのか。」
実際の商品展開では、その判断が商品によって変わります。
商品展開・店頭導入サポートでは、卸価格だけを切り離さず、商品の価値や売場、販路なども確認しながら、自社の商品展開として成立する形を一緒に整理しています。

ブランディングディレクター|事業構造パートナー
松本カヅキ

