― 中小企業こそ、“削る勇気”がブランドを強くする ―
こんにちは。ブランディングディレクターの松本カヅキです。
中小企業の経営相談に乗っていると、
「ブランディングの戦略って、どう決めればいいですか?」
という質問をよくいただきます。
SNS、LP、広告、イベント、営業……
やろうと思えば施策はいくらでもあります。
しかし、その結果として多くの企業が陥るのは、
「やることが増えすぎて、ブランドの“芯”が見えなくなる」
という状況です。
ブランディング戦略の本質は、
“やるべきこと”を増やすことではありません。
戦略とは、“やらないこと”を決めること。
この「削る勇気」こそが、
限られたリソースでブランドを前に進めるための最重要ポイントです。

1. 中小企業に“戦略”が必要な理由
中小企業は、少人数で複数の役割を同時に担うことが多く、一つひとつの施策に投入できる時間も人員も限られています。
商品開発、営業、アフターフォロー、発信、改善──
どうしても業務が分散しやすい構造です。
だからこそ戦略とは、
「どこに力を集め、どこをあえて手放すか」
を明確に決める行為です。
ここが曖昧なまま走り続けると、
施策の優先順位が毎回揺れ、ブランドが迷走してしまいます。
2. 戦略とは「やらないこと」を決めること
では、具体的に“やらないこと”とは何か。
現場で200社以上を支援してきた中で分かった、
もっとも成果につながりやすい、
“やらないことの基準”を紹介します。
① ターゲットを広げすぎない
「30〜50代の男女」のような設定は、
誰にも響かないメッセージを生みます。
戦略とは、
「誰に価値を届けるか」 を絞り込むこと。
選ぶということは、同時に“捨てること”。
ここでの決断が、後の施策すべての基準になります。
② 商品・サービスを“なんでも屋”にしない
できることを片っ端から積み上げていくと、
ブランドの個性は薄まり、伝わりにくくなります。
本当に力を入れるべきポイントはどこか。
どの価値を“芯”として尖らせるのか。
“やらないこと”を決めることで、
むしろブランドの強みがくっきりと浮かび上がります。
③ 続かない施策は最初からやらない
SNSの毎日投稿、広告、イベント……
一時的に手を出しても、続かなければブランド資産にはなりません。
戦略は「勢い」ではなく「構造」。
継続できる施策だけに絞る方が、結果として最短で成果につながります。
3. 戦略が欠けると起こる“3つの症状”
戦略が曖昧な企業には、必ず同じような症状が現れます。
症状1:発信が毎回ブレる
SNS、LP、営業資料──
毎回違う軸で語られ、“何を大事にしている会社なのか”が顧客に伝わらない。
症状2:判断が毎回ゼロから始まる
新しい提案が来るたびに、
「これはうちに必要なのか?」
を一から議論し、意思決定が疲弊する。
症状3:施策が積み上がらない
活動が“点”で終わり、ブランド像が育たない。
これらはすべて、
“やる範囲”と“やらない範囲”が決まっていないことが根本原因です。
4. “削る勇気”は、戦略の核心
“削る”とは、単に排除するのではなく、
「何を見せ、何をあえて見せないか」という“価値の通り道”を整える行為です。
多くのブランドが迷走するのは、
情報・サービス・施策を盛り込みすぎて、
本来の価値がぼやけてしまうからです。
逆に、削ることで“芯”が際立ち、
ブランドが前に進むための優先順位が明確になります。
中小企業の戦略でまず必要なのは、
この「削る勇気」です。
5. 整理 → 戦略 → 実践の流れがつながると、ブランドは動き始める
ブランドは、一つの施策では動きません。
順番があります。
整理(大事なことを再定義する)
→ 戦略(集中と選択を決める)
→ 実践(価値が伝わる導線をつくる)
整理で芯が整い、
戦略で“やる・やらない”が明確になり、
実践でその価値が顧客へ届く形になります。
この3つがつながったとき、
ブランドはようやく“前に進み始める”のです。
6. 戦略を体系的に学びたい方へ
この記事は、戦略の核心である
“やらないことを決める” という視点に絞って紹介しました。
戦略の全体像(整理→戦略→実践の5ステップ)は、こちらの記事で詳しくまとめています。👇
全体像を押さえることで、
ブランドづくりの進め方が
一本の“流れ”としてつながり、
迷いない戦略がつくれるようになります。
しくみブランディング®|松本カヅキ
― ブランディングは、整理で仕組みになる。 ―

