バイヤーに刺さる、販路と売り場づくりの事前準備
1. どこから出すかで“ブランドの価値”が決まる?
たとえば、バラエティショップやコスメショップのバイヤーにこう聞かれたことはありませんか?
「今はどこに展開されていますか?」
「今後、どこで展開予定ですか?」
これはただの確認ではなく、
バイヤーが「ブランドのポジション」や「育ち方」を見極める質問です。
展開するお店の“順番”は、いわばブランドの履歴書。
その履歴自体が“ブランドストーリー”になっていきます。
2. 展示会は慎重に!ありがちな“展開順のミス”
商品が完成した!
↓
展示会に出よう!
↓
「どこでもいいから売りたい!」と奔走…。
──この流れ、実は危険です。
展示会での出展順序や出展先によっては、
「ブランドの見え方」が一気にチープになることもあります。
たとえば、
・価格重視の問屋で条件が先行してしまった
・ブランドイメージに合わない売り場から出てしまった
というケースでは、
その後の“本命バイヤー”からの反応が鈍くなることも。
だからこそ、
「どこから出すか」=展開の順序設計は、ブランディングの一部と捉える必要があります。
3. “販路戦略”と“見せ方設計”はセットで考える
どの販路に出すかによって、「伝えるべきこと」も変わってきます。
たとえば──
- 高価格帯 → 世界観を重視したビジュアル訴求
- エステやサロン → 現場で伝わる説明と使い方導線
- SNS発 → 話題性と共感ストーリーを重視
そしてここにもうひとつ──
「第三者の声=口コミ」の設計も重要です。
企業発信の情報や販促物がどれだけ充実していても、
それだけではユーザーの“自分ごと”にはなりにくい。
「その商品、誰かが勧めてたよね?」
「これ、どこかで見たことあるな」
そんな“誰かの声”があることで、ブランドは急に身近になります。
口コミは、いまや商品の構成要素そのもの。
もはや「原価」として捉えてもいい、重要な仕組みです。
4. 「ブランドの見られ方」は“順番設計”で変わる
展開先・順序によって、バイヤーに伝わる「ブランドの信頼度」は変わります。
たとえば──
- サロンで丁寧に育てられたブランド
- ECでファンを育ててからリアル展開したブランド
- 展示会で話題化し、注目されたブランド
このように、“育ち方”の履歴=販路戦略のストーリーが、
「商談での安心感」として評価されるのです。
さらに、
「口コミが蓄積されているか」は、バイヤーにとっての安心材料にもなります。
「SNSやレビューでよく見かけるな」
「投稿者が本当に使ってそうだな」
といった印象が、導入の後押しになります。
5. 商談は“売り込み”ではなく、“買い場づくりの提案”
バイヤーへの商談は、「売ってください」よりも、
「買いたい人たちのための“売り場”を一緒につくりませんか?」という提案の方が効果的です。
たとえば──
「すでにこの商品にはSNSなどでファンがついていて、
その方々の“買い場”をつくりたいんです。」
こういったストーリーとセットで商談に臨むことで、
「信用できそう」「導入後がイメージできる」といった感触を持ってもらえます。
第三者の口コミ・レビューが用意されていれば、
それは“その場に同行してくれる販促パートナー”のような存在にすらなります。
6. 注意!“1JAN1ベンダー”の落とし穴
実務的な話ですが、大手チェーンのバイヤーは、
「1JAN=1ベンダー(納入元)」というルールに非常にシビアです。
複数の代理店から同じ商品が紹介されたり、
異なる条件で話が進んでいたりすると、
「ちょっと面倒だから、やめておこう」
と判断されることもしばしば。
初期段階では、「どの代理店・商社に任せるか」も慎重に。
営業ルートの整理=信頼のしくみ設計です。
\まとめ/
販路戦略とアプローチ順は、ブランドの“見られ方”を決める設計図。
そして、第三者による「口コミ」も、実はその設計の一部です。
商談に進めるかどうかは、売り込みの強さよりも──
「このブランド、ちゃんと売り場まで考えているか?」
「ユーザーから、どう評価されているか?」
という点で判断されているのかもしれません。
次回Vol.4では、いよいよ“現場”に踏み込みます。
展示会や営業活動で、どう「伝え」「引き出し」「納得させるか」。
台詞・資料・タイミング──
バイヤーが“うなずく瞬間”を生む、実践ノウハウをお届けします。
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👉【Vol.2】価格戦略の基本|卸価格・利益設計のリアル
また、こうした考え方の背景にあるのが、私が提唱する
『しくみブランディング』という視点です。
中小メーカーや個人ブランドが「しくみとして育つ」ためのノウハウは、別シリーズでも発信しています。
👉 ブランド設計から実装までの連載はこちら
【しくみブランディング連載|第1回〜第6回】